海外と比較した日本のボクシングスタイル

Nekromantik
ボクシング
View the category list
4
Post a comment
まずアメリカボクシングをしている日系アメリカ人から見た、日本のスタイルがアメリカと違うと思った点をざっくりと紹介します。このノートを見れば多かれ少なかれ日本は技術とスタイルが違うという事が絶対に分かります。どちらが良いかはありません。でも同じボクシングのスタイルではありません。
・スタンス
・スタイル
・ステップ
・膝の使用

そしてアメリカから見ると日本のファイトスタイルはヒットアンドアウエイが基本で、ディフェンス技術が今でも低く、精神的にタフ。個人的に見ても攻撃に特化しているのがよく分かり、打ち合いの技術が特に低い所から特攻・アンド・アウエイと勝手に呼んでいます。

スタンス

note-339893-i1-img.jpg


ここから勝手に使わせていただきました。
http://www.sportsclick.jp/boxing/02/index06.html
日本のボクシングの構えはこの様に前傾姿勢で前足に体重が乗り、より脇を締めて両腕が縦で前の方に来ます。左手を高く構えているのも特徴です。

アメリカ
note-339893-i2-img.jpg


これが主な現代的なアメリカのボクシングの基本的な構えです。体重は両足に同じぐらい(主に後ろ)に乗せていつでも前か後ろ、自由に体重を乗せて構えを変えられる様にしています。しかし、メキシコは常に両足に均等に体重を乗せても、アメリカは基本的に後ろ足に重心を構えてる時も攻撃する時も置いてるディフェンス重視のファイトスタイルです。そして左手の位置は日本のよりは低く、背筋は真っ直ぐ。見ての通り、右脇は締めても左の腕の向きはもう少し斜めて脇も開いているというより、無理に締めていないだけです。アフリカ、フランス、イギリス、メキシコになるとまた構えが変わります。アメリカの構え=正解でない事は様々な国の選手達とよく関わる事があるアメリカ人自信が一番よく理解しています。

フック
note-339893-i3-img.jpg


日本では主に横拳で教わると聞きますが、アメリカとメキシコでは当たる面積を広げつつ、ガードを横からすり抜けるのに良いという事で縦拳がフックの打ち方の基本とされています。勿論、場合によっては縦、横のどれでも誰でも両方使い分けられますが、縦が基本の打ち方です。そして腰を回転させて、前足の軸足を横に向けるという点までは一緒だと思います。

ステップ
これは特に日本とアメリカで違いが出るので重要です。アメリカは攻撃でも移動でも全てのステップがすり足かそれに近い物です。以前見た日本のボクサーは連続ジャブの時に足音をドンドン立てて足を持ち上げていましたが、あれはアメリカで間違っていると言われるやり方です。やった方はまず直されます。

そして日本の他国と特に異なるのがこのステップの順番ややり方です。ワンツーもジャブも動画の基本とされるやり方を見ていると飛び込みワンツー、飛び込みジャブになっています。自分が知る限りアメリカ、メキシコ、ヨーロッパではこれは間違っていると言われ、直されます。しかしそれでチャンピオンになっていて成功者を日本は出しているので他国の概念を押し付けるつもりはありません。

例:
これがよく見る日本のワンツーとジャブの基本動画ですね。
https://www.youtube.com/watch?v=zaUmox9cJtw
https://www.youtube.com/watch?v=OUKGyfV0VgY
アメリカとメキシコなどはワンツーの場合、ジャブを打ったら左足が同時に前に出て、後ろ足はまだ付いて来ません。そしてストレートを打つと同時ぐらいに後ろ足をスライドさせながら元の肩幅の位置に戻します。日本のみたいに飛び込むなと注意する理由はジャブを打って飛び込んだらいざという時に逃げ道が無いからです。これが自分が日本のスタイルは特攻アンドアウエイと呼ぶ理由です。飛び込むのでジャブ打った次の瞬間回避しづらいからです。ただ、攻撃に特化している理由もまたこの飛込みで一気に距離を潰して相手も逃げづらいからです。これがディフェンス力が低いされる理由の一つでもありますが。イギリスもアメリカと違ってジャブの時にフック並みに前足の軸足と腰を回転させてストレートを打ったりなど少し違いますが。しかしこれがヨーロッパ系のボクサーが突き系の攻撃が強いとされる理由ですね。

アメリカ例2:
https://www.youtube.com/watch?v=dHUutXudf8o
ステップの基本はこの動画が一番見やすいです。左足を前に出し、後ろ足を引きずると言っています。これがアメリカの基本的な歩法です。ワンツーを打つ時も全く同じ進み方です。ただ、タイミングはジャブと同時に左足も前、そしてストレートを打つと同時に後ろ足の軸を90度回転させながら肩幅まで引きずって戻すという感じです。勿論勢いが必要な時は日本のワンツーみたいに飛び込んで行く事もありますが、それは基本では無いです。

見ての通り、アメリカもそうですが、メキシコもステップの基本はすり足です。

スタイル
しつこく言っていますが、日本のボクシングスタイルはヒットアンドアウエイが基本だと思うので、これが全日本ボクサーの根底にあるという事ですね。アメリカはインファイター寄りでプレッシャーファイターの戦術と戦い方が根底にあります。プレッシャーファイターは相手に精神的か肉体的プレッシャーを与える技術に特化した選手で手数の多い選手やインファイターの事では全然ありません。ガードでしっかり顔面を守って、頭を動かし、必要以上に動かずに相手をロープまで追い込んで潰すという戦術です。つまり、日本のよりあまり動かず、パリ、スリップガードをしながら無駄な体力を使わずにプレッシャーを与える戦術です。これはインファイターもアウトボクサーもこのリラックスした省エネ運動のプレッシャーファイターの戦術を使えます。

殴り合い

note-339893-i4-img.jpg


この殴り合いというのは殴り合いの技術の事です。つまり、パンチが沢山交差する中でどれだけ自分の身を同時に守れるかという事です。この技術力が最も高いとされるのはメキシカンで、客観的に見て一番技術力が低いのは日本です。


note-339893-i5-img.jpg


日本の選手の打ち合いの技術力が特に低い理由と打たれ弱い理由の一つが膝です。
https://www.youtube.com/watch?v=VoGLTVBH1Qk
この動画の様に下に移動する場合、状態は真っ直ぐでできるだけ上半身を前に倒したくありません。理由は動作が遅れるのでディフェンス力と攻撃力が落ちるからです。しかし日本のボクシングスタイルはあまり膝を使わないのでいざという時にダッキングやウィービングがしづらいです。日本の選手が大抵試合で上半身を前に倒してお辞儀しているのが見てみればよく分かります。通常の状態からして膝を伸ばして真っ直ぐ立ちすぎているので、いざフックが来た時にすぐ避けて反撃では無く、大きく後ろに跳んで回避します。何故なら下に移動できないからです。

例えばミゲール・コットーなど打ち合いの技術力が特に高い選手を見ればよく分かります。
https://www.youtube.com/watch?v=VXOT_JZTYcE
彼にはちゃんと上下の動きがありますが、日本のボクサーは左右と前後の動き以外は特にありません。アメリカでは膝などを使って上下の動きができないと攻撃の直撃を食らいやすいと言われています。日本人選手は決して打たれ弱くありません。ただ攻撃の直撃を食らいやすいだけです。稀に内藤大助、ファイティング原田、具志堅など低い体勢の状態でも戦える異質な日本人ボクサーはいますが。

膝が上手く使えて上下の動きがあるという事は、攻撃できる態勢をキープしつつ、射程距離で避けられるという事です。つまり、攻撃を回避したすぐ後に相手に攻撃を打ち返す事ができるわけです。
例:
https://www.youtube.com/watch?v=5PzuHFerKDc
長谷川vsモンティエル
これは見 てて気持ちの良い物では無いですが、良い例です。日本の選手は前から一発以上のパンチを出す場面になるとどんどんガードが開く傾向があります。これは内山 高志選手も似た様な場面を何度か見ます。つまり、1か2発以上のパンチを出すと必然的により直撃を貰う可能性が高まるという事ですね。
長谷川選手はまさにモンティエルに膝が伸びきった反撃がくれば直撃を食らう体勢でノーガードでパンチを2発以上出しに行き、モンティエルは回避しながら射程距離で攻撃を打ち返しています。アウトボクシングに徹すれば長谷川選手は勝てると思います。また打ち合いに行ったらまた同じ結果になると思います。それは打ち合いの技術の差です。長谷川選手は単純にパンチを交換し合う技術がありません。身体能力の差とかラッキーではありません。

ガード
note-339893-i6-img.jpg


日本のボクサーが打ち合いの技術力が低く、打たれ弱くなってしまうもう一つの理由ですね。自分はアメリカにいながらメキシコとアメリカの両方のボクシングスタイルを習いましたが、アメリカでは珍しい事ではありません。その中でメキシカンは強く突き刺してくるジャブを両腕のガードを閉じて、前に突き出して押し返す技術、もう一つはジャブが来たらパリみたいにそれに合わせて片腕のガードを軽く小さく前に出して弾き返すという技術です。この様に、ガードの使い方からして日本と違います。日本のガード、ブロックのスタイルはグローブを頭か体にくっ付けて直撃をグローブの上に受けてできるだけ軽減させながら下がる事です。

アメリカやメキシコだとガードに受けながら腰と腕を回転させ、攻撃を流す様にします。膝も曲げて上下に動き攻撃を弾いたり、流したりします。だからこそ自分を守りながらすぐに反撃できます。日本はガードが硬く、アメリカやメキシコは柔らかく見える理由がそれです。ガードが硬いと言うか、ガード一辺倒だと相手の攻撃の番、自分の番となるだけですが、ガードが柔らかいと相手の攻撃の番の最中に自分も攻撃が返しやすいわけです。ブロックカウンターという技術もガードしながら腰、肩の回転と膝をしっかり使って攻撃をより軽減させるからすぐに反撃できるわけです。

最後に
これはアメリカと特にメキシコというよりヒスパニック系相手に絶対にしてはいけないと言われている事ですが、日本人選手がよくやる真後ろに飛ぶ、真後ろに下がり続ける行為です。特にメキシカンはステップと攻撃のタイミングをわざとずらす技術があり、真後ろに下がる敵を捕まえるのが得意中の得意です。このステップと攻撃のタイミングをわざとずらす歩法が日本で言われている「伸びる」パンチの正体です。

https://www.youtube.com/watch?v=A2Mee5s__kE
この西岡vsマルケスで西岡選手が結局勝ちましたが、真後ろに下がっている時などに簡単に捕まっている場面が何度か見れます。アメリカでも真後ろに下がり続けるのがNGにされているのはアメリカもその様に下がる選手を捕まえるのが得意だからです。

全盛期を過ぎた長谷川選手とはいえ、長谷川vsキコ・マルチネスも良い例です。本来あんな風に前に出て来られたら下がり続けるのでは無く、膝を曲げて相手の上に覆いかぶさるか、相手の体を押し付けてからクリンチで捕まえてから横へピボットして移動などの戦法があります。しかし日本の選手には肝心のクリンチなどの組技の技術、ラフファイトに対応できる技術が無い様に思えます。
https://www.youtube.com/watch?v=EviPfiNwJdo

注意:これは少なめに簡単に一つ一つを解説しているだけです。あまり丁寧に説明するとあまりに長くなり、時間も無いので色々説明を省いている部分も結構あります。膝の使用の技術やその他の違いの説明などまだまだありますが、次何についての知恵ノートを書き、いつ更新するかは気分次第です。明日か1年後の可能性もあります。

補足
アメリカの右足に体重が乗っているという話についてですが、以前これを参考にして真似した方がいたので注意の為補足する事にしました。まず、右足に体重を乗せますが、画像を見れば分かりますが、画像の方は右後ろにそっくり返って構えていません。オーソドックスなら右足+右に体と頭と重心を置いています。これはアメリカでライン・オブ・ファイアと言って攻撃が来るエリアから頭と体を相手に対して少しずらして構えたディフェンス重視の構えです。日本のボクシングスタイルはその攻撃が来るエリアに頭がしっかりと残っている状態です。メキシカンやアフリカンのボクシングスタイルも似た位置に頭がありますが、彼らの場合、高いガードで全方向からの攻撃に対して顔面をしっかり守っているのが特徴てきです。日本の構えでは全角度からの攻撃を守りきれないのでよりフットワークを活用するスタイルになるわけですね。

サウスポーならこんな感じですが、この下の画像のタイプはオールドスクールと言って古い構え方です。この画像に引いてある線が攻撃が来るエリアですが、そこからより大きく頭を避けた状態が昔のアメリカのスタイルです。現代はこの線の中にもっと頭が入った状態です。多分攻防の技術のレパートリーが増えたのでディフェンス重視からメキシカン寄りの攻撃とディフェンスを50:50の割合で考えるスタイルに変わってきた物だと思っています。

note-339893-i7-img.jpg


これはL字ガード特有の構えでもありますけどね。ジェームズ・トニーや下の画像のベルナルド・ホプキンスが良い例です。とはいえ、メイウェザーは若干違いますが、それはL字ガードに関する知恵ノートをまた新たに作る時に書く事にします。いつになるかは気分次第ですが。

note-339893-i8-img.jpg

SHARE

Comments 4

There are no comments yet.
-
2019/08/29 (Thu) 21:14

Only the administrator may view.

Only the administrator may read this comment.

カミサマ
2019/12/08 (Sun) 04:08

内容が全部素晴らしいです。
ボクは格闘技オタクで、笑
格闘技もしてました。
you tubeで解説すべきです!

柔道レスリング、は小さい時、
日本拳法は大学でしました。

ただ、全国で指折りの先輩と練習した際投げられた時に頭から床に打って、首を捻挫したんですが、毎日、僕らの時はガチガチに殴りあってたんで、右対右はよくフックが当たって首が痛くて、そのせいで痛いとは思わず、ちゃんと治さずいたら、体に後で凄い代償が来て、練習もちゃんとできない、日常生活もままならい時期が来て、もう10年で、かなり治って、友達とマススパたくさんしますし、動きの悪い部位はあっても、痛いとこはありません。

その時期たくさん動画をみて、今最近も
見ますが、本当に技術がある人ってそういないですよね。

みんな弱点がありますよね。隠すのが上手いですが。パッキャオは昔のほうが良かったですね。

重心を低くしはじめてから悪くなりましたね。
メイウェザーは右から入るときにつんのめってますね。マクレガーはボクシング昔してただけあるし、総合みてても、ボクシング技術は相当なものです。武術的な技術もありますし、メイウェザーは正直、全然あの試合はダメでしたね。
マクレガーが、右アッパーからの左の返しか、右アッパーからの右フックを、
右アッパーからのすぐジャブを打てていたら、かなり危なかったと思います。

日本人は防御の技術をそもそも教えれない。股関節まわりの使い方が下手上半身の胸椎の使い方が本当に下手だと思います。

メイウェザーなどの動画をみてあれを当たり前だと思って本当に練習すべきですね。

ダッキングもしゃがんでるだけの人多いですしね。右まわり左まわりに、上下左右にまわせない人が多いですし。

ある時期からロマチェンコに憧れて、右利きサウスポ練習してます。
ロマチェンコは右脳まで鍛えてて素晴らしいですね。左ストレートは近距離以外そんなに美味くないですが、もう、あの近距離支配する能力があるので、それが弱点にすらなりませんが。

単純にバックステップ下手な人多いですよね。例えば、長谷川穂積は前のめりで前足ひきつけすぎのバックステップするんで、次につながらないか、攻撃した際は、彼はつま先でステップしすぎな為、ステップインは悪くないですが前のめりで左手下がって、すぐ戻れない上、体が開きすぎるし、上半身の柔軟性がない為に、戻りが遅いですしね。

ライトクロスも日本人使わなすぎというか、教えれる人も少ないんでしょうね。

フックも反動使って打つ打ち方しかできない人多いですよね。

アッパーにしても反動使わず、連動で打てない。アッパーすら打てない人多いですよね。

こないだのドネアは細かい技術、守備面素晴らしかったですね。うち下ろしみたいな近距離からの右ではなくて、苦手みたいですが、中距離からの右ストレートがあれば
井上に勝ててたような気がします。
あとは、肩いれた左フックを狙いすぎましたね。フックを打った後、骨盤を右から左に返す右ストレートを、自分から攻めに使って欲しかったです。

さすがに井上がそれに右ストレートを簡単にあわしにはこれないと思うので。

長くなりました。すいません。
話せる相手が近場にいないので、
たくさんただただ書いてしまいました。

最近、左利きでフィジカルと、身体能力、センス抜群の友達と左で本気のマススパの日々です(^^)笑

-
2020/02/26 (Wed) 07:28

日本では空手等、なんやかんやの武道ではすり足基本で、この記事で言うところのアメリカンスタイルなのにボクシングになるとやたら前のめりになるのは何でなんですかね?

Nekromantik
2020/02/28 (Fri) 09:00

Re: No title

昔のアメリカのボクシングスタイルはコンビネーションでも全てのパンチにしっかり腰を回転させたり、構えだけは現代のアメリカのボクシングスタイル以上により防御重視とはいえ、フットワーク以外の技術の面が今ほど発達していなかったので、日本のより攻撃重視の特攻スタイルが対アメリカのスタイルに相応しかったのかも知れません。

今となってはメキシコの攻防一体で戦うスタイルに、日本の攻撃重視相手だと、攻撃と防御の両方が間に合いづらく、リズムを狂わされるので、対メキシコの良いスタイルとは思いますが。再戦でメキシカンが防御重視のアメリカ寄りで戦うと相性が悪くなりがちですが。

日本は防御重視に弱く、攻防一体タイプに強い印象です。話が逸れましたが、つまり旧世代のアメリカのスタイル対策の戦い方、もしくは最も当たる確率の高い、対メキシコのスタイルでは考えています。

ボクシング